2012年12月23日日曜日

自治体国際担当職員向けテキスト『自治体国際政策論』執筆の動機と目的


本書は地方自治体の国際担当職員向けテキストとして書いた。自治体職員だけでなく、首長、議員、地域国際化協会、NGONPO等の職員にもぜひ読んでいただきたいと思う。筆者は神戸市における33年間の実務と、大学での10年間の国際政策研究に基づいて本書を執筆した。筆者がこの本を執筆した動機は次の4点である。


(「国際化政策」から「国際政策」へ)

第1は、自治体には「地域国際化政策」はあっても「国際政策」という概念がないためである。たしかに、自治体にも国際担当部課があり、職員はいつも忙しそうに働いている。国際担当職員に「あなたの自治体はどのような国際業務をしているか」と尋ねると、判で押したように、①姉妹都市交流、②青少年の海外語学研修派遣、③在留外国人との交流、④パンフレットや道路標識・駅看板等の外国語表記の外国語表示等を挙げる。これらの業務は地域国際化のために重要なものであることは間違いない。けれども自治体に求められる国際業務はそれだけではない。グローバル化が進展した今、これらを包含した「国際政策」が求められている。

筆者は自治体の国際事務を次の4つに分類している。すなわち、①外国との交流・交際(姉妹都市交流等)、②多文化共生(在留外国人との共生策)、③国際経済施策(外国人観光客・コンベンション誘致、外資系企業誘致)、④地域国際協力(福祉、上下水道等の住民生活密着分野で自治体の平素の業務で培ったノウハウ提供等)である。これらの事務を展開する政策を国際政策と定義している。

(自治体の人事異動)

2は、自治体には国際事務を円滑に処理できる職員が育ちにくいことである。都道府県、市町村では、おおむね3年に一度、定期人事異動がある。初めて国際担当の部課に配属された職員は、新しい仕事に戸惑うことが多い。理由は、それまでやってきた仕事とは大きく違うように見える上、外国人住民を対象とする施策には簡単な外国語が必要になることもあるからである。新規配属職員は、「なにをどの程度までやったらいいのかがわからない」ので戸惑うため、前例踏襲を心がけ、一日も早く別の部下への移動を心待ちにすることになる。そのような職員のための実務的な教科書が必要なのである。

(住民力の活用)

3は自治体への国際事務処理のための問題提起である。具体的には、①自治体が独自の国際政策を持つこと、②国際事務処理にあたっては住民力を活用し住民と連携して行うこと、③国際事務遂行に必要な自治体職員のグローバル・リテラシー(国際対応能力)育成、④国際事務の事業評価と事業仕分けである。自治体税制ひっ迫化の中で国際事務といえども聖域ではない。

(地域益増進)

4は、自治体国際事務は、自治体本来の目的である「住民福祉の増進」(地方自治用)のための「手段」であることはいうまでもない。ところが、手段と目的とを混同している事例が決して少なくない。自治体の国際事務にも税金を投入する以上「地域益」の増進が求められる。地域益は、「住民福祉の増進」につながることであり、経済的利益だけでなく、地域文化創造、多文化共生、自治体のプレゼンス向上等も含め広義にとらえるべきである。

(国際事務の理論と実践)

5は、これまで自治体国際事務について理論と実践を分かりやすく解説する教科書がほとんどなかったためである。地域国際化、多文化共生に関する本はたくさん出されている。けれども、自治体職員向けの国際事務の入門書はきわめて少ない。

 

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