2013年9月16日月曜日

新条約施行 内地雑居 コミッション中毒 「神戸又新日報」


『セルポート』201391日号(連載通算第452号)「神戸今昔物語」

内地雑居の暁(16) 「コムミッションの中毒」

◆「コミッションの中毒」  カットをご覧いただきたい。男性が苦しそうに口から吐き出しているのは「大和魂」である。足元には紙幣と硬貨が散らばっている。

コミッションは、「①(商取引などで)仲介の手数料。口銭。(わいろの意味にも用いられる)」、「大和魂」は「日本民族に固有の気性(のうち、よい面)」(『新明解国語辞典』)である。

不平等条約が撤廃されて内地雑居が実現すれば、外国人も日本国内で自由に活動することになり、外国企業に雇われる日本人も増えることになる。カットは、外国人に雇われた日本人が「コミッション中毒」(「わいろ中毒」)になり、「大和魂」を捨てて、金もうけに走る姿を皮肉っている。

ちなみに、英語のcommissionには、「わいろ」のニュアンスはなく、「①委任、委託、②(委任された)任務、職権③委員、委員会、④手数料」(『ライトハウス英和辞典』)である。

◆兵庫の気風  安政条約で取り決められた開港場は兵庫であった。幕末、兵庫は海上交通の中心、物資の集散地、西国街道の宿場町として殷賑を極めていた。伝統ある兵庫では、「旧家、素封家の旦那衆」は、住民から名誉ある「公共的義務がある者」として「崇められていた」(『神戸開港三十年史』)。兵庫は品格ある街であった。

◆神戸の新移住者  開港した神戸に、各国は領事館を開設し、欧米の貿易商が商館を構え、ビジネスチャンスを求めて、世界中から人々が移住してきた。

外国人だけではない。国内からも人々が移り住んだ。「新来の新住民は、古郷(ママ)を棄てヽ新運命を求めんとして来る者」であり、「冒険も恐れず、労苦も辞せざる気力ある者」であった。「彼らの眼中には自己あるのみ、隣人すら之なきなり。彼らの胸中には利己あるのみ、他人の利害を顧慮するに遑(いとま)なきなり。彼等の欲望には銭あるのみ、名誉の如きは問ふところにあらず。彼等は高尚な嗜好を有せず、而して、壮(さか)んなる営利の意思を有す。彼等は優美なる思想を有せず。而して燃ゆるが如き貨殖の希望を存す。(略)神戸市中は、実に斯(かく)の如き住民を以て充満したり」(「上掲書」)。神戸はゴールドラッシュの様相を呈していた。

神戸の新住民は、伝統ある兵庫の住民の目には「軽薄なり、狡猾なり、点智なり、成上紳士」(「前掲書」)と映った。守旧兵庫と新興神戸の気風は劇的に異なっていた。

◆外国商館に雇われた人達  居留地の欧米の商館主は、中国人を筆頭番頭として雇っていた。居留地商館との取引は中国人を通して行われることが多かった。中国人は、持ち前の勤勉さと才覚で活躍し、中国人がいなければ居留地の商館の運営は成り立たないほどであった。商売の世界では、手数料、わいろはつきものである。居留地の商館主に雇われていた日本人も商売のやり方を学んだ。

 新条約施行による内地開放で、日本中が「居留地になる」と庶民はあらぬ心配をした。
 

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