内地雑居の暁(21) 「宙にブラリ」
◆「宙にブラリ」 カットでは、外国人と日本人の間にできた子供の手を引っ張りあい、子どもを困らせている。子供の右手を引っ張っている腕は「如来」であり、左手は「天帝」である。キリスト教徒と結婚した日本人の子供が死亡したとき、仏教の天国へいくのか、キリスト教の天国へ行くのか「宙にブラリ」となるとしているのである。新条約施行で「内地雑居」が実現すれば国際結婚も増えることになる。
国際結婚した人が離婚した時、どちらが親権を行使するかが問題になることは、昔も今も同じである。
2011年5月9日、米国テネシー州の郡裁判所は、2人の子供を連れて米国から帰国した日本人妻に対し、米国人男性の訴えを認め4億9000万円の賠償を命令した(読売新聞20011.5.10)。
さらに、米国籍の元夫(47)に無断で長女(9)を連れて2008年に帰国した兵庫県出身の女性(44)のケースもある。この女性は、2011年3月、神戸家裁伊丹支部に親権変更を申請し認められた。けれども、同年4月、彼女が渡米した際、米国で逮捕され「親権妨害罪」で訴追された。ウイスコンシン州の裁判所で、彼女は「長女を元夫の元に戻すことを条件に重い罪を貸さない司法取引に応じた」(日本経済新聞、2012.6.15朝刊)。
◆米上院で新法案可決 2013年11月10日、米国下院外交委員会は、日本を事実上の標的とした法案を可決させた。「国際結婚の破綻に伴う子供の連れ去り問題が未解決な国に対して、制裁措置を発動する法案」である。この「法案は、連れ去り事案の存在が相手国の関係当局に通知されてから180日たっても解決されない場合、大統領は公式訪問、文化交流、軍事支援の停止や輸出制限などの措置を取らなければならない。(略)ただ、上院側の態度は未定で、法案成立には大統領の署名も必要なため、この法案の行先は見通せない状況」(読売新聞2013年10月11日朝刊)である。
◆新連載予告 ここまで21回にわたり、「神戸又新日報」に連載された風刺画「内地雑居の暁」を紹介してきた。新条約施行を2年後に控えた明治30年頃の庶民の懸念が描かれている。
次号から、想を新たに、「折田年秀が見た居留地時代の神戸」の連載を開始する。元薩摩藩士折田は湊川神社初代宮司である。折田は、宮司に就任した明治6年から逝去する明治30年まで、居留地時代の神戸を湊川神社から「定点観測」してきた。折田の在任期間は、神戸の居留地時代とほぼ重なる。折田が克明につづった日記には、岩倉具視、福沢諭吉、神田孝平、鳴滝幸恭、神田兵右衛門ら著名人が頻繁にも登場し、鉄道開通、西南戦争、ロシア帝国ニコライ皇太子参拝等、神戸の歴史的事実も記録されていて、居留地時代の神戸の空気が伝わってくる。
新しい連載はロングランになりそうである。
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