「なんこうさん物語~湊川神社から見た神戸の近現代~(第2部)」第102話
「神戸又新日報」の明治の教育関連記事スクラップ集
◆うれしい訪問者 1月28日、神戸では珍しい積雪があった。雪が降るとなぜか心が弾 む。はたして、翌日私の研究室にうれしい訪問者があった。
来客は、神戸シルバーカレッジ卒業生(12期)の大崎雅勝さん、濱谷浩三さん、松山昭さんである。彼らは平成20年3月の卒業であるので、すでに卒業後5年が過ぎている。3人とも70代後半から80代で、うち2名は小学校の校長経験者である。カレッジの国際交流・協力コースで、私が卒業研究を担当させていただいたのがご縁の始まりである。
◆「神戸又新日報」の教育関連記事 彼らは、「幕末から明治にかけての神戸の教育」と題した論文と、神戸市の教育に関する「神戸又新日報」記事の分厚い「切り抜き集」を持参した。3人が手分けして、5年の歳月をかけて、神戸市文書館所蔵の「神戸又新日報」から、教育に関する記事、広告等の情報を集めてまとめた「A4両面コピー・231ページ」の膨大な資料である。学校の運動会・入学式・卒業式等の記事、生徒募集広告、外国人の英語塾広告、文部省検定教科書広告等もあり興味深い。
「神戸又新日報」は明治17年創刊、昭和14年「無期休刊」の日刊紙で、明治から昭和にかけての情報の宝庫とも言える貴重な新聞である。明治17、18年の新聞は欠落しているが、文書館には明治19年1月から昭和14年迄の新聞が、ハードコピーの簿冊形式で、時系列を追って保存されている。彼らが収集したのは、明治19年から、外国人居留地が神戸市に返還された明治32年までの教育に関する記事、広告である。
◆生涯学習テーマ「神戸教育史」 カレッジを卒業する時、彼らが筆者に「卒業後も研究を続けたいがどのようなテーマがよいか」と相談したとき、筆者が「次の世代の研究者の参考になるような基礎データ集を作成すればどうか」と示唆したことがきっかけである、と彼らは懐かしそうに語った。
卒業後、彼らはせっせと文書館に通い、膨大な量の新聞を老眼鏡と虫眼鏡を頼りに1枚1枚綿密にチェックして、教育に関する情報が掲載されている紙面を複写し、記事等を切り抜いてスクラップ集を作製した。文書館の複写代は1枚当たり10円であるので、彼らは相当な経費も費やしている。
私は彼らの努力の結晶を見て胸が熱くなった。カレッジで卒論のお手伝いをさせていただいてよかった、と心底から思った。
◆資料公開 3人が5年かけて収集した膨大な情報である。神戸近代教育史の研究者にとりこのような基礎資料は「垂涎の的」である。これから博士論文、修士論文に取り組む学生には、この資料の存在は「暗闇の中の光明」となることは間違いない。
シルバーカレッジの校是は「再び学んで他のために」である。彼らは校是を忠実に実践し、この資料を神戸市立中央図書館、神戸市文書館、神戸シルバーカレッジ等に寄贈すると語った。立派な「知的社会貢献」である。
3人の努力に心から敬意を表したい。
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